新巻鮭の嬉しくない父との思い出

新巻鮭と聞くと、ただただしょっぱくて生臭くて冷たくて、良い思い出など一つもないイメージです。
そんな話を会社の人としたら、大変驚かれました。
なぜならその方は、新巻鮭が好きだからです。
美味しいと信じられない言葉を口にするのです。

私が子供の頃、寒くなってくると父は大量の鮭を買ってきました。
それを、どのような方法で進めて行ったのか覚えていないのですが、洗って塩を塗り込み新巻鮭を作って行くのです。
いえ、もしかしたら私が勝手に思い込んでいるだけで、新巻鮭ではなく魚の処理方法だったかもしれません。
いずれにしても、この辛い作業を必ず手伝わされるのです。
冬の寒い季節、より冷たくなっている水は子供の手には過酷過ぎました。
それに、塩をもみ込む作業も嫌で嫌で仕方がなかったのです。
でも、逃げることはできません。
処理が終わった大量の鮭は、次々に吊るされていきます。
すると、辺り一面生臭くなるのです。
これら父お手製の新巻鮭は、年末年始に家に来る親戚の方への贈り物になりました。
大変親戚の多い家でしたので、苦労して作った新巻鮭も全部無くなってしまいます。
そう言えば、いつから新巻鮭を作らなくなったのでしょうか。
いつ頃、あの過酷な作業から解放されたのかすっかり忘れています。
今でも、特別食べたいとも好きだとも思いません。
甘塩の切り身の方が食べやすいですし、調理がしやすいように思います。
それとも、私が食べ方を知らないだけなのでしょうか。
我が家では鮭を干していましたが、色んなものが吊るしてある村でした。
柿やかんぴょう、大根に餅など、どこの家でも何かしら吊るしていたことを思い出します。

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